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仁科邦康

多摩美術大学情報デザイン学科情報デザインコース4年在学中。

大学2年次より個人で立ち上げた自主制作アニメーション企画「スタジオハンモック」にて、全編セル画による80分の長編アニメーション映画「MAGIC」を監督しています。

将来はアニメーション映画監督を目指し、観てくれる人のことを第一に考えたエンターテインメント作品を手掛けることを信念としています。

覚え書き ~卒制をつくるにあたって~

 この作品は私、仁科邦康が多摩美術大学で制作する最後の作品となります。私の多摩美術大学での生活と呼べるものはほとんどなく、気づけば自身で立ち上げたアニメ企画のスタッフを抱えアニメーション制作の怒涛に揉まれ、”カントク”と呼ばれる日々。学校よりもスタジオにいた時間の方が長いことは言うまでもないのです。そんな学生時代をおくった私にとって、多摩美術大学の学生として卒業を迎えるためにつくらなければならない作品というものは非常に厄介なものでした。この作品で一体何を描くべきか。

 多摩美術大学の学生として、そしてあの佐野研二郎氏を”デザイナー”として尊敬している私にとって、つくるべき作品はこれなのだと覚悟するまでにいくらか決心が必要でした。私は今現在も、佐野氏のデザインしたエンブレムは盗作ではないと考えています。これはデザインを学ぶ者であれば明々白々な事実です。しかし、この問題はあのデザインが盗作であるかどうか?ということが重要ではありません。この騒動の最大の問題は、無知なるモノが群れをなし曖昧な思考のもと誤解した事実は真実として世に定着する、ということです。そして、その巨大な群れの前では何者も無力で、真実を捻じ曲げたモノたちの知らぬところでひっそりと殺されるのです。その群れに喰い殺された者は一体どうしたらいいのか。その群れに喰い殺されないためには一体どう気を配ればいいのか。

 喰い殺されないためには一つ、作品をつくらなければ良いのです。己の作品で世の中と関わることをやめるだけです。しかし、私にそんな生き方ができるとは思えない。我々デザイナー、演出家、役者、作曲家、歌手、画家、彫刻家、、、表現者として、ものをつくり世の中と関わっていくことを選んだ者たちは、つくり続けるしかないのです。

 喰い殺された者は?この問いには応えようがありません。しかし、どんなに苦しい思いをしようと、どんなに世の中に裏切られようとも、佐野氏にはデザイナーを続けていただきたい。彼ほど、「デザインで人々を笑顔にしたい」という気持ちを純粋に形にできるデザイナーはいないのだから。

 

 つくることこそ我々の”生きがい”なのだと信じて、この作品を形にすることを覚悟しました。

                          2016.10.28 仁科邦康

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